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「生かす」と「活かす」の違いと使い分け

 
Kollama Yujiro
投稿者 Kollama Yujiro. 更新された: 16 1月 2017
「生かす」と「活かす」の違いと使い分け

「今後の生活にいかしていきたい」の場合、「生かす」と「活かす」どちらが正しい使い方なのでしょうか?と突然聞かれたらうまく答える自信がありますか。ちなみに私は自信がありません。この質問を見たときは、何となく「活かす」かな。と思っていたのですが、どうやら「活かす」を使えない場合があったり、語源がかかわってきたりすることが分かったので、意味や語源、事例、歴史、いろいろな角度から調べてみました。

目次

  1. 「いかす」の意味
  2. 「生かす」と「活かす」の違いを漢和辞典で調べる
  3. 「生かす」と「活かす」を用いた文章を比べる
  4. 「活かす」と「生かす」の歴史
  5. まとめ

「いかす」の意味

まず、「生かす」と「活かす」の違いを調べるために国語辞典を引いてみました。するとこのように記されていました。

いか・す【生かす/▽活かす】

  1. いったん息絶えたものを生き返らせる。蘇生 (そせい) させる。「溺れた人を人工呼吸でいかす」
  2. 死なないようにする。命を長らえさせる。「魚をいけすに入れていかしておく」
  3. 有効に使う。活用する。「長年の経験をいかす」「廃物をいかす」「素材をいかして料理する」
  4. 一度消した文や字句などを復活させる。「元の文章をいかす」

出典:デジタル大辞泉 dictionary.goo.ne.jp

上に【生かす/▽活かす】となっていますが、これは活かすという字が常用漢字にはないということを表しています。常用漢字とは1981年3月の国語審議会答申に基づき同年 10月1日に内閣告示・訓令された常用漢字表に示された漢字です。法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活における漢字使用の目安となることを目指したものなのだそうです。つまり、上記に表示されている法令をはじめとした公文書には「活かす」という言葉が存在しないことから、「生かす」や、かな書きで「いかす」と書いたり、「活用する」といった言葉に置き換えたりしているのです。しかし一般的には意味が伝わりやすいとのことで、使い分けて書くことが多いようです。

では「生かす」と「活かす」は、一般的にはどのように分けられているのでしょうか。

「生かす」と「活かす」の違いを漢和辞典で調べる

「生かす」と「活かす」を漢和辞典で調べたところ、このようなことがわかりました。

他動詞としての「生かす」は、「命をたもたせる」という意味で、「命の維持」という消極的な意味があります。例えば、「さっき捕まえた捕虜はとりあえず生かしておけ。」のようになります。

それに対して、他動詞としての「活かす」は、「命をたすける、甦らせる」という意味で、「命の復活」「活用」というような積極的な意味があります。こちらも「特技を活かした職業に就きたい。」のように使います。

しかし実際に「生かす」と「活かす」を使い分けている文章を見てみないと実感がわかないというのが正直なところではないでしょうか。そこで1981年以前の文章を探してみました。

「生かす」と「活かす」を用いた文章を比べる

1)、2)を見てください。同じ人物が書いた文章で「生かす」と「活かす」が使い分けられています。

  1. ・・・自分が生き、ひとを生かすために、女はますます多くの困難にうちかって行かなければならない時勢です。だから、明るい生活力を充実させる意味でも女は家庭にあっても何か一つ、中心的な仕事を持つことがのぞましいと、あなたはいっていらしたのだと思います。・・・<宮本百合子「現実の道」 青空文庫>
  2. ・・・勿論、そのなかにも女優が自分のものを活かすか、活かせないかという点でのあたまのよさ、わるさはいわれるけれども。 ベッティ・デヴィスの「黒蘭の女」というのはどんなものだろう。ポーラ・ネグリという女優のあたまのよさは生活力でねりあげ鍛えられ・・・<宮本百合子「映画女優の知性」 青空文庫>

1)の「生かす」は文脈からも生死がかかっていることから、命の維持という消極的な意味で使っていることは明らかです。そして2)の「活かす」も「活用」という積極的な意味で使っていることは明らかです。

出典:デジタル大辞泉 dictionary.goo.ne.jp

「活かす」と「生かす」の歴史

「活かす」が常用漢字からなくなり、公文書のみとはいえ姿を消したのに、今だ「活かす」が使われていることの一因として「生かす」と「活かす」の歴史が挙げられます。

他動詞の「いかす」の発生は、西源院本『太平記』などにみられる「舐らしてぞ活したりける」が一例になります。また室町時代の抄物などから多く見られるようになりますが、以降、次第に下二段の「生く」にとって代わっていきました。現代では、プラスの意味で用いる例が多く、「目が生きている」のように「精気がある」の意味で用いたり、「ランナーを生かす」のように「有効である」の意味で用いたり、「生かした人」のようにすばらしいという意味で用いるものもあります。

もともと他動詞の「いかす」は「活かす」が用いられていました。そのため、常用漢字が「生かす」に統一された現在でも「生かす」と「活かす」の違いが論じられているのではないでしょうか。

まとめ

「生かす」と「活かす」の違いと使い分け

  • 歴史上、先に現れたのが「活かす」で、現在、常用漢字として使われているのが「生かす」。
  • 「生かす」は「命をたもたせる」という意味で、「命の維持」という消極的な意味がある。一方「活かす」は「命をたすける、甦らせる」という意味で、「命の復活」「活用」というような積極的な意味がある。

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