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「ご冥福をお祈りします」が失礼な理由

 
Kollama Yujiro
投稿者 Kollama Yujiro. 更新された: 20 1月 2017
「ご冥福をお祈りします」が失礼な理由

決まり文句ではあっても、あまり使うことのない「ご冥福をお祈りします。」という言葉、実は失礼に当たることがあります。どのような場合、失礼なのでしょうか。また、この言葉を使いたくなる場面における対策について、一緒に考えましょう。

また、「お悔やみ申し上げます」の意味と使い方の記事も合わせてご覧ください。

目次

  1. 「ご冥福をお祈りします。」が失礼だと言われるのはなぜ
  2. 宗教の別がない言葉
  3. 今後の対応策
  4. 実例
  5. 最後に

「ご冥福をお祈りします。」が失礼だと言われるのはなぜ

ご冥福をお祈りします。」とは、故人の死後の世界での幸せをお祈りしますという意味する仏教由来の言葉です。そのため、仏教以外の宗教を信仰される方に使うのは不適切であると言われています。

仏教以外の宗教と書きましたが、仏教の中でも浄土真宗の方に対しても、この言い方は失礼だと言われています。というのも、「ご冥福」は、「冥」が暗くて見えないという意味であることからも分かるように、亡くなってから暗い世界で迷うかもしれないから、そのようなことがならないためにお祈りするという考え方がその根底にあります。

しかしながら、浄土真宗では信心を得れば、生きながらにして往生すること、即ち、極楽浄土に去って生まれ変わることが確定するとされています。だから、浄土真宗の方のご冥福を祈るということは、これ即ち、現世においての努力が足りず、往生できなかっただろうからということになり、失礼だとされています。

宗教の別がない言葉

「ご冥福」には宗教の別があります。宗教の別がない言葉はありますか。

結論から言えば、あります。例えば、「ご愁傷様でございます。」や「お悔やみ申し上げます。」などがそれに当たります。それ以外にも、「この度は本当に…」で後は、想像してもらうというのも、口頭での挨拶であればあり得ます。実のところ、「本当に」から先、言いよどむというのも、立派にマナーにかなっています。

医療関係や葬儀関係のお仕事など、人の死と接する機会がある職業についているのなら話は別ですが、多くの人が普段は人の死とは関係ないところで生きています。それが人の死という非日常と接した時、「冥福」や「愁傷」など、非日常的な言葉を使って、その驚きと悲しみを伝えているのです。

かの一休禅師は、このようなことを言いました。なぜ人はお正月を祝うのか、死ぬ時が1年近づいているというのに。確かにその通りです。人間は生まれた瞬間から死に向かって歩き出します。生と死が一本の道上にあることは頭ではわかっていても、やはり生きている者にとって死は受け入れがたいものだということでしょう。

また、言いよどむことがマナーにかなっているというのも、極めて珍しいことであることを忘れてはいけません。文末まではっきりと言いなさいと子供の頃、言われたことはありませんでしたか。日本語は文末まではっきり言わないと、相手に正しい情報が伝わらないかもしれない言語だから、そう言われたのです。

例えば、「今日はちょっと…」という言い方があります。「今日はちょっと…、明日もちょっと…、明後日もちょっと…」なのか、「今日はちょっと…、明日もちょっと…、でも、明後日なら大丈夫。」ということだってあるのです。しかしながら、人の死に際しての「この度は本当に…」は、後に言いたいことを誤解されることはまずありません。

今後の対応策

日本の仏教徒のうち、浄土真宗の門徒数とを見るとこれくらいなのかと思いますが、一つ一つの宗派の門徒数と比べると、浄土真宗の門徒数は、抜きん出て多いです。だから、これを読んでいる人は「ご冥福をお祈りします。」は制限のある言葉だと知っている訳ですから、仏教徒以外の宗教を信仰している方や、宗派の分からない仏教徒の方には、「ご冥福をお祈りします。」は言わない方が無難です。

あっ、言っちゃっていたという人もご心配には及びません。前にも書いた通り、人の死は非日常のことです。遺族の立場に立つことは、それに輪をかけて非日常的なことです。そのような時に、私は○○を信仰しているのに「ご冥福」だなんてと、目くじらを立てる人はかなり少数派です。それに、テレビで訃報を聞いていても、「ご冥福」と言っている方はそれなりにいます。過去のことに関しては、あまり気にする必要はないでしょう。

実例

ご参考までに、私は仕事関係の場合は「ご愁傷さまでございます。」は用いず、「お悔やみ申し上げます。」を使っています。「ご愁傷さま」を使わないのは、上司の命令で残業が決定した時などに、慰め半分、冗談半分で「ご愁傷さま」と笑いながら言ったり、言われたりすることがあるので、同じ言葉をご不幸のあった方に使うことがためらわれるからです。他にも、良いフォーマルな響きに聞こえる言い方はあるかと思ますが、「お悔やみ」という和語の響きが、ご遺族の悲しみにも寄り添えそうで、個人的にはしっくりきます。

仕事関係でも親しい方や仕事関係以外の場合は「この度は本当に…」で、それに続けて、お話する時間があるようなら「生前、○○でお世話になりました。とても優しくして頂いて、大変助かりました。」と一言、故人の活躍なり、感謝の言葉なりを添えています。悲しみは死の直後には来ません。時間が経って悲しみが徐々に癒えて、思い出が徐々に整理された時、葬儀の時にこんなことを言っている人がいた、活躍していたのね、感謝されていたのねと思ってもらえたら、故人の方にとって、それが一番なのではないかと思っています。

最後に

いかがでしたでしょうか。これは今の私の考え方です。10年後も同じ考えをしているかは、分かりません。貴方にとって、一番、自分らして、良いと思えるお悔やみの仕方を考えておくと、いざという時、役に立つことでしょう。

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